乳歯はしっかり生えてるけど、永久歯は正常に生えるの?

こんにちは!安城の歯医者、安城ひがしやま歯科こども矯正歯科、院長の神谷明光です。

子供の歯がきれいに並ぶかどうかは、多くの親御さんにとって大きな関心事ではないでしょうか。

乳歯の頃に歯並びが整っていても、永久歯になった途端にガタガタになってしまうケースもありますし、逆に乳歯が隙間だらけだったのに永久歯はきれいに生え揃うケースもあります。歯並びの乱れには「歯の大きさ」と「顎の大きさ」のアンバランスが深く関係しており、その背景には現代のライフスタイルや習慣が大きく影響していると言われています。

特に顎の成長には「舌の位置」が大きく関わっており、適切な姿勢や舌のトレーニングをしないまま成長期を迎えると、思わぬ歯列不正につながる可能性があるのです。

今回のブログでは、子供の歯並びが乱れる要因や、舌のトレーニングなどで顎をしっかり成長させる方法について解説します。

将来的に歯科矯正が必要になるリスクを下げるためにも、日頃からできるケアやトレーニングをぜひ取り入れてみてください。

 


目次

  1. 子供の歯並びが乱れる主な要因
    1-1. 歯が大きい
    1-2. 顎がしっかり成長しない
    1-3. 噛む回数の減少
  2. 顎の成長と舌の位置の関係
    2-1. 正しい舌の位置とは?
    2-2. 舌が上顎に当たらないとどうなるか?
  3. 舌の位置を正すためのトレーニング
    3-1. ホッピング(舌鳴らし)
    3-2. お口ポカンを改善する(鼻呼吸の習慣化)
    3-3. 姿勢を整える(ストレートネック対策)
  4. 日常生活における注意点
    4-1. 食生活の見直し
    4-2. 顎を使う遊びや習慣
    4-3. 定期的な歯科検診の重要性
  5. まとめ

1. 子供の歯並びが乱れる主な要因

1-1. 歯が大きい

最近の子供は、昔の子供と比べて顎が小さくなる傾向があるのに対し、歯そのものが大きいと感じられるケースが増えています。もともと大人に比べて小さい顎の中に、大きめの歯が生えてこようとすると当然スペース不足が起こりやすく、結果として歯並びがガタガタになりやすいのです。
乳歯列がきれいに並んでいても、永久歯が生えるころに歯が大きく成長してくると、思わぬ歯列不正に陥ることがあります。

1-2. 顎がしっかり成長しない

歯並びには「顎の大きさ」と「歯の大きさ」のバランスが重要です。顎がしっかりと成長すれば、歯が大きくてもある程度スペースを確保できます。しかし、近年の子供は「舌の位置が低い」「噛む回数が少ない」などの理由で、十分な顎の成長を得られずにいることが多いと言われています。
舌の位置が上顎についていないと、上顎が広がりにくくなり、結果として歯が並ぶスペースが狭くなってしまいます。

1-3. 噛む回数の減少

柔らかい食べ物や飲み物が増え、食事時間が短くなるなど、現代の食生活では「しっかり噛む」機会が減っています。噛む回数が少ないと顎の骨に刺激が伝わりにくく、成長が促されないという問題が生じます。この点については詳細を別の記事で扱う予定ですが、噛む力の不足も歯並びの乱れを助長する要因の一つです。


2. 顎の成長と舌の位置の関係

2-1. 正しい舌の位置とは?

何もしていないときに舌は「上顎」に軽く触れるように位置しているのが理想です。具体的には「上の前歯のすぐ裏側あたり」に舌先がつき、そのまま上顎全体に舌が広がるイメージです。これを「スポット」と呼ぶこともあります。
舌が正しい位置にあると、上顎が舌の力を受けてしっかりと左右に広がり、顎の成長をサポートします。逆に、舌が下がった位置にあると、顎が十分に成長せず狭くなりやすいのです。

2-2. 舌が上顎に当たらないとどうなるか?

舌が下がった状態になると、上顎が広がらないだけでなく、口呼吸になりやすくなるケースも少なくありません。口呼吸が続くと、歯ぐきの炎症や風邪をひきやすくなるなど、さまざまな健康リスクにもつながります。
また、常にお口がポカンと開いている「お口ポカン」の状態は、顎が前方や左右に十分に成長しない原因の一つ。これらが積み重なると、歯並びだけでなく全身の姿勢や健康にも影響を及ぼす恐れがあります。

 


3. 舌の位置を正すためのトレーニング

舌を正しい位置に戻すためには、日頃の習慣づくりが大切です。具体的には以下のようなトレーニングや意識づけをおすすめします。

3-1. ホッピング(舌鳴らし)

上顎に舌をつけて「チュッチュッ」と音を鳴らすトレーニングです。

  • やり方: 口を軽く閉じた状態で舌先を上あご(前歯の裏側より少し奥)に押し当て、舌を離すときに「パチン」と音がなるようにします。
  • 効果: 上顎に舌を当てる習慣がつき、舌の筋力が強化されます。舌が上顎を押し上げる力が自然に働くようになり、顎の成長をサポートします。

3-2. お口ポカンを改善する(鼻呼吸の習慣化)

口が常に開いている状態だと、舌が下がりやすくなり、上顎に当たらないままになってしまいます。お子さんに「お口が開いているよ」「お鼻で呼吸しようね」と声掛けをするなど、こまめに意識してあげましょう。

  • ポイント:
    • 意識して唇を閉じる練習をする。
    • 寝ているときにも口呼吸になっていないか、チェックする(場合によっては耳鼻科診察も検討)。

3-3. 姿勢を整える(ストレートネック対策)

背中が丸まったり、ストレートネックの状態だと、頭の位置が前に出てしまい、舌の位置も下がりやすくなります。

  • 対策:
    • デスクワークやスマホを見る時間が長い場合は、首や肩に負担がかかりにくい姿勢を心がける。
    • 定期的に体操やストレッチを行い、姿勢をリセットする。

4. 日常生活における注意点

4-1. 食生活の見直し

柔らかい食べ物ばかりではなく、ある程度歯ごたえのある食材(例えば野菜スティック、固めの果物など)を食事に取り入れると、自然に噛む回数が増えます。噛むことは顎の成長だけでなく唾液の分泌を促し、むし歯や口臭予防にも役立ちます。

4-2. 顎を使う遊びや習慣

現代の子供は昔に比べて、外遊びや運動量が減りがちです。顎の筋力や全身の発達を促すためにも、しっかりと噛む(風船ガム遊びなど)や、口周りの筋肉を使う遊び(吹き矢、ストローでの吹き込み遊びなど)を取り入れるのもおすすめです。

4-3. 定期的な歯科検診の重要性

歯が生え替わる時期や成長期には、定期的に歯科医院を受診し、噛み合わせの状態や歯並びの変化をチェックすることが大切です。異常が見つかった場合、早期に対処することで本格的な歯列矯正が必要になる前に改善できるケースもあります。

 


まとめ

近年、歯列不正が増加傾向にあり、歯科矯正が必要になる子供が増えています。その要因には、歯と顎のサイズのアンバランスや、舌の位置が低いまま成長してしまうことが大きく関わっているのです。日常から「舌を上顎につけること」「お口ポカンを改善すること」などを意識するだけでも、将来の歯並びに大きな差が出てくる可能性があります。

特に、噛む力や姿勢などは、歯や顎だけでなく全身の健康にも影響を与えます。まずはお子さんに「舌鳴らし」のやり方を教え、一緒に楽しくトレーニングしてみてはいかがでしょうか。また、食事内容や生活習慣の見直しを行い、鼻呼吸や姿勢の改善にも取り組んでみると良いでしょう。

歯が生え替わる時期はあっという間に過ぎてしまいます。大切な成長期に、少しでも正しい姿勢や舌の使い方を身につければ、歯並びだけでなく全体的な健康に好影響をもたらします。何より、「歯がしっかり並んでいるかも」という安心感は、お子さんや親御さんにとって大きなメリットになるはずです。

もし歯並びや噛み合わせについて気になることがある場合は、ぜひ早めに歯科医院で相談してみてください。将来的に矯正治療が必要かどうか、あるいは予防的な対策で十分な場合もあります。お子さんの将来の美しい歯並びと健康のために、日頃の取り組みをぜひ大切にしていきましょう。

安城ひがしやま歯科こども矯正歯科
院長 神谷明光
公益社団法人 日本口腔外科学会 認定医
第40回日本ティップエッジ矯正研究会
名古屋大会 大会長