『歯ぐきの下に黒いものって歯石なの?』

こんにちは。 安城市の歯医者、安城ひがしやま歯科こども矯正歯科、院長の神谷明光です。

 

前回、前々回では歯石についてお話ししました。
特に前回の終わりでは歯肉縁下歯石について少しだけお話ししました。
そこで今回はこの歯肉縁下歯石についても詳しくお話ししたいと思います。

歯肉縁下縁下歯石とは?
1.付く場所はもちろん歯肉縁下である。(当たり前!)、
2.色は黒褐色、成分は80%が無機石灰化成分で残りが有機成分である。
3.歯肉溝(歯周ポケット)滲出液が石灰化に強く関与している。
4.歯肉からの出血成分が混じっている。
5.セメント質(歯の根の表面の組織)に入り込んでいる。
6.縁上歯石に比べると量は多くないが、縁上歯石よりかなり硬く、除去が困難
7.縁上歯石とは違ってどの歯の部位でも生成する。
8.歯肉縁上歯石も歯周病の原因ではあるが、縁下歯石のほうが歯周病の原因としては大きな原因である。
 
色が黒褐色なのは血液成分を取り込んでいるからです。
血液成分のヘモグロビンがこの歯石の中に入っているために黒くなります。
ヘモグロビンの中に鉄分が含まれているからです。
歯肉溝(歯周ポケット)の成分にも唾液と同様の成分が含まれているためやはり歯石はできやすいのです。

重要なのはこの歯石がセメント質に入り込んでいることです。
そのために我々歯科医、歯科衛生士でも除去するのに時間がかかるのです。
しかし、歯肉縁下歯石に付着したプラークは除去されず停滞するため為害性が強いので、歯周病治療となると放置するわけにはいきません。
きちっと歯周病治療を行うのには必須の治療法なのです。

実際にはまずは歯肉縁上(歯冠部)の歯石を除去します。
すると、まずは歯肉の炎症が緩和してきます。
1週間以上期間を開けた後、再度歯周検査を行い、歯肉縁下に歯石が認められる場合は、歯肉の下の歯石の除去を行います。
これを「ルートプレーニング」といいます。
ルートプレーニングは、歯周ポケットの奥の歯石(歯肉縁下歯石)や汚れ、歯周病菌に感染した歯の表面を専用の器具できれいに取り除く治療のことです。
ルートプレーニングは歯石の付き方にもよりますが、基本的には数回にわけて行います。
一度にあまり多くの歯をルートプレーニングすると、出血が多くなり、全身に歯周病菌が回ってしまう「菌血症」のリスクが高くなる事など考慮して、回数は患者さんごとに判断して行います。
よって一度にお口の中全てをルートプレーニングすることは保険のルール上でも認められていません。
来院回数を減らしたいと思われる方がおられると思いますが、これだけは安全のためにやむを得ません。
スケーリング・ルートプレーニングを行ってもすぐに歯周病の症状が改善されない場合で、早期の歯周病治療を行わなければいけない人には、歯周外科手術による治療が必要になります。

また、歯周病の進行状態によって歯石除去時の痛みは変わってきます。
歯肉炎程度の軽度歯周病では、歯肉縁上に歯石が付着しているため歯石除去時の痛みはほとんど起こりません。
しかし、重度歯周病で、まだ歯石除去を一度も受けていないような場合には、歯周ポケット内に大量の黒い歯石(歯肉縁下歯石)が付着していることがあり、歯肉深くに器具を入れなければいけない時も多々あります。
その上炎症も強いこともあり、強い痛みが出ることが多く、麻酔をかける必要な場合が多いのです。
麻酔と言えばやはり注射の麻酔を思いだし、痛いから嫌だなあと思いますが、当院では表面麻酔を使う、できるだけ細い針を使うなどで、麻酔の痛みを抑えるよう努力をしております。

いかがでしょうか。
歯肉縁下歯石ができる人はしばらく歯科医院に通ったことががない人によく見かけられます。
最初は上記のように治療に苦労するかもしれませんが、そのあと定期的にクリーニングに来院していただければこのような歯石はつきにくいのです。
ぜひ歯を長持ちさせ、歯周病で歯を失うことが少なくなるよう努力してみてください。

安城ひがしやま歯科こども矯正歯科
院長 神谷明光
公益社団法人 日本口腔外科学会 認定医
第40回日本ティップエッジ矯正研究会
名古屋大会 大会長