詰め物・被せ物のジルコニアとは?

こんにちは!安城の歯医者、安城ひがしやま歯科こども矯正歯科、院長の神谷明光です。

前歯や奥歯に被せ物をするとき、「白い素材にしたいけれど、どんな素材があるのだろう?」と悩まれる方は多いのではないでしょうか。

近年では審美性や耐久性、さらにはアレルギーのリスク軽減を重視する方が増え、「メタルフリー治療」という言葉を耳にする機会が増えました。

今回は、そのメタルフリー治療の中でも特に注目されている最新の白い素材「ジルコニア」について詳しくご紹介します。ジルコニアは人工ダイヤモンドとも呼ばれるほど硬くて丈夫な素材であり、歯科だけでなく医科でも利用されるほど安全性に優れています。強度の高さ、審美性、アレルギーリスクの低さなど、さまざまなメリットがある一方、保険適用外で費用面に負担が大きくなるなどのデメリットも存在します。

そこでブログでは、ジルコニアの概要やメリット・デメリット、デメリットをカバーする方法などをわかりやすく解説し、「白くて丈夫な被せ物」を検討している方に参考になる情報をお届けします。「保険外治療でもいいからより良い素材を使いたい」「メタルフリー治療に興味がある」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

 


目次

  1. ジルコニアとは?
  2. ジルコニアのメリット
  3. ジルコニアのデメリットと対処方法
  4. ジルコニアが選ばれる背景:メタルフリー治療の時代
  5. ジルコニアの治療の流れ
  6. ジルコニア治療を検討する際のポイント
  7. まとめ

1. ジルコニアとは?

ジルコニアは「二酸化ジルコニウム」を主成分とするセラミック素材で、歯科だけでなく医科の分野でも利用されている安全性の高い素材です。人工股関節や人工骨の材料としても用いられるほど身体への親和性が高く、「人工ダイヤモンド」と呼ばれるほど強度や耐久性に優れています。

歯科医療においては、むし歯の治療後の被せ物や詰め物、さらには失った歯を補う「ブリッジ」の構造体としても利用されるケースが増えてきました。従来のセラミックよりも強度が高いため、前歯のみならず奥歯にも安心して使える点が注目されています。

1-1. なぜ「人工ダイヤモンド」と呼ばれるのか

ダイヤモンドほど硬いわけではありませんが、金属(特に保険診療で一般的な銀歯素材)よりも強度が高く、日常の咀嚼に十分耐えうる性能を持ちます。また、磨耗に強く割れにくいため、将来的にかぶせ物が欠けたりヒビが入ったりするリスクが軽減されます。

1-2. 身体への安全性

もともと骨や人工関節にも使用されている素材なので、長期的に身体の中にあっても害が少ないとされています。また、金属成分を含まないため、金属アレルギーのリスクを大幅に下げられることが特徴です。


2. ジルコニアのメリット

ここでは、ジルコニアを使った被せ物の主なメリットを4つご紹介します。

  1. 割れにくい
    従来のセラミックは自然な白さを表現できる反面、硬いものを噛んだときに割れやすいという弱点がありました。しかしジルコニアは強度が非常に高いため、強い咬合力がかかる奥歯にも適用可能です。実際、保険適用の金属素材(銀歯)よりも強いというデータがあり、耐久性の高さから長期使用を期待できます。
  2. 身体に優しい素材(アレルギーの心配が少ない)
    ジルコニアは金属を含まないセラミック素材のため、金属アレルギーによる症状の心配がほとんどありません。金属アレルギーに悩んでいる方や、金属を使わない治療を希望される方にとっては大きなメリットです。
  3. 白くて見た目が良い
    ジルコニアは白く透明感のある素材で、銀歯のように金属が目立つことはありません。笑ったときにちらっと見える銀歯が気になるという方も、ジルコニアなら安心です。
  4. 変色が少ない
    プラスチックやレジン系の素材に比べると、経年劣化による変色が起こりにくいのも特徴です。そのため、長期的に美しい見た目を保ちやすいメリットがあります。

 


3. ジルコニアのデメリットと対処方法

優れた素材であるジルコニアですが、もちろんデメリットが全くないわけではありません。ここでは、代表的なデメリットとその対処法について解説します。

  1. 保険がきかない(全額自費)
    ジルコニアは最新の治療素材であり、保険適用の対象外となっています。そのため、費用面での負担が大きくなるのが最大のデメリットです。治療費は歯科医院や症例によって異なりますが、複数本の歯を治療するとなると高額になる場合があります。
    対策:費用対効果を考慮する

    • 自費治療は高額ではありますが、長期間安定して使える可能性が高いため、長い目で見るとメリットが大きいと考える患者さんも多いです。
    • 歯科医院によって分割払いなどの支払い方法を用意している場合もあるため、カウンセリング時に確認してみると良いでしょう。
  2. 単体では自然な白さになりにくい(スペクトルの問題)
    ジルコニアはもともと乳白色(真珠色)をしており、光の当たり方によってスペクトル(虹色)が出てしまうことがあります。そのため、特に前歯などの審美性が強く求められる部位では、単体のジルコニアだけで天然歯そっくりの色を再現するのは難しいケースもあります。
    対策:セラミックを表面に貼り付けて色を補正

    • ジルコニアの上に別のセラミック層を焼き付ける「ジルコニアセラミッククラウン」を選択することで、より自然な色調や透明感が得られます。
    • 費用はやや高くなりますが、審美的な仕上がりを重視する場合は有効な手段です。
  3. 取れやすい(接着の問題)
    ジルコニアは表面が非常に滑沢(ツルツル)で、従来の接着剤ではくっつきにくいという性質があります。そのため、他の素材と比べて外れやすいリスクがあると言われることも。
    対策:特別な接着剤・表面処理

    • 歯科用の専用プライマーや接着システムを使用することで、接着力を高められます。
    • 歯科医院によっては、ジルコニアの表面に特殊な処理を施し、接着性を高める工夫を行っています。

 


4. ジルコニアが選ばれる背景:メタルフリー治療の時代

近年、金属アレルギーを避けるために金属を使わない「メタルフリー治療」を希望する患者さんが増えています。以前は銀歯などの金属素材での治療が保険診療の主流でしたが、下記のような理由からメタルフリーが注目されるようになりました。

  • 金属アレルギーリスク:銀歯に含まれるパラジウムやニッケルなどの金属が溶け出し、アレルギーを引き起こす可能性がある。
  • 審美性の向上:笑ったときに銀歯が見えるのを嫌う人が増え、白い素材を求める傾向が強まっている。
  • 腐食・変色のリスク:金属は経年で錆びたり腐食したりすることで、歯と被せ物の間に隙間ができやすくなる。そこからむし歯が再発するケースもある。

ジルコニアはこれらの問題を大きく改善できる素材として重宝されており、見た目の美しさはもちろん、長期的に安定した口腔環境を保ちやすい点が高く評価されています。

 


5. ジルコニアの治療の流れ

ジルコニアクラウンやインレー(詰め物)を装着する際の一般的な流れは、以下のとおりです。

  1. カウンセリング・診断
    • 患者さんの症状やご希望を伺い、口腔内検査やレントゲン撮影などを行います。
    • ジルコニアを選択した場合のメリットやデメリット、費用などを説明します。
  2. むし歯の除去・形成
    • むし歯や古い詰め物などを取り除き、被せ物を装着するために歯を必要最低限の範囲で削ります。
    • 痛みや不安がある場合は麻酔を行います。
  3. 型取りと仮歯の装着
    • 歯型を採取し、歯科技工所や院内のCAD/CAMシステムでジルコニアの補綴物を作製します。
    • 製作期間中は仮歯を装着し、歯の欠損部分を保護します。
  4. ジルコニアの装着
    • 完成したジルコニアの被せ物や詰め物を装着し、噛み合わせや接着状態を調整します。
    • 必要に応じてプライマーや専用接着剤を使用してしっかりと固定します。
  5. メンテナンス・定期検診
    • 装着後も定期的に歯科医院で検診を受け、噛み合わせのチェックやクリーニングを行いましょう。
    • ジルコニア自体は丈夫ですが、歯ぐきとの境目からむし歯や歯周病が進行する場合もあるため、セルフケアも重要です。

6. ジルコニア治療を検討する際のポイント

  1. 費用対効果をよく考える
    ジルコニア治療は保険が適用されず、比較的高額です。しかし耐久性や審美性、アレルギーリスクの軽減など、長期的なメリットを得られる可能性があります。短期的な費用だけで判断するのではなく、長い目で考えることが大切です。
  2. 歯科医院の実績や使用素材を確認する
    ジルコニアクラウンにも複数のグレードや加工方法があります。歯科医院によって取り扱い素材の質や価格が異なるため、カウンセリング時にしっかり相談しましょう。
  3. 前歯か奥歯か、部位による見た目の要求度合い
    前歯では審美性を高めるために、ジルコニアの上にセラミックを焼き付けたものが適している場合があります。一方で奥歯では強度を重視した単体ジルコニアが選ばれることが多いです。
  4. 定期的なメンテナンスの重要性
    いくら素材が優れていても、歯ぐきの健康を保たなければトラブルが起きる可能性はあります。ブラッシング指導や定期検診を通じて、装着したジルコニアを長持ちさせるよう心がけましょう。

 


まとめ

ジルコニアは「人工ダイヤモンド」と呼ばれるほど硬く、アレルギーリスクの少ない優れたセラミック素材です。従来の銀歯や一般的なセラミックと比べても、耐久性や審美性に優れ、口腔内での長期使用に適しています。特に、メタルフリー治療の広がりに伴い「きれいかつ丈夫な被せ物を入れたい」という方にとって、ジルコニアは有力な選択肢と言えるでしょう。

ただし、保険がきかないため費用が高額になったり、自然な歯の色を再現するには追加のセラミック加工が必要になったり、接着面の問題から外れやすさを防ぐ工夫が必要になったりと、デメリットも存在します。こうした点を理解した上で、費用対効果やご自身の生活スタイル、アレルギーの有無などを踏まえて検討することが大切です。

歯科医院によっては、それぞれ異なる種類のジルコニア素材や接着方法を採用している場合もあります。気になる点や不安な点があれば、治療前のカウンセリングでしっかり質問し、納得できる説明を受けましょう。大切な歯の健康を守るためにも、信頼できる歯科医院と相談しながら、あなたに最適な治療プランを見つけてみてください。

安城ひがしやま歯科こども矯正歯科
院長 神谷明光
公益社団法人 日本口腔外科学会 認定医
第40回日本ティップエッジ矯正研究会
名古屋大会 大会長